百人一首をもっと知ろう!

《歌仙絵師崇石作》

★ 12月3日更新

今から千年ほど前の人たちが、自分達を取り巻く美しい四季の風景や厳しい自然環境・・・恋しい人を思う激しい恋心や失恋の嘆き、そして・・世の中や人生への様々な思い、心の動きをリズミカルに歌で表現しました。今一度振り返ってみる価値はあります・・・・

この絵は歌仙絵師崇石さんの許可をうけて掲載しています。

【五の歌】

 ( 奥山に 紅葉踏みわけ 鳴く鹿の 
       
                       声きく時ぞ 秋は悲しき )
作者 :猿丸太夫
伝説の歌人で、三十六歌仙の一人。元明天皇の頃の人など諸説ありますが実際には不明です。この歌も、古今集では「詠み人知らず」として紹介されています。
<歌の意味>  
  
人里離れた奥山で、散り敷かれた紅葉を踏み分けながら、雌鹿が恋しいと鳴いている雄の鹿の声を聞くときこそ、いよいよ秋は悲しいものだと感じられる。
 
<語の意味>

【奥山】

 人里離れた奥深い山のことです。

【紅葉踏みわけ】
 
 散った紅葉が地面いっぱいに敷きつめられたところを、雄の鹿が
 踏み分けていくこと。この句では昔から、人が歩いているのか鹿
 なのかが議論されていましたが、鹿と見るのが穏当です。

【鳴く鹿の】
 
 秋には、雄の鹿が雌を求めて鳴くとされており、そこに遠く離れ
 た妻や恋人を恋い慕う感情を重ねています。

【声聞くときぞ秋は悲しき】

 「ぞ」は強意の係助詞です。
 全体では「(そういう時は他にもいろいろあるけれど)鹿の鳴き
 声を聞くときは、とりわけ秋が悲しく感じる」という意味です。
  
<雑感>

紅葉が散ったその葉を踏みしめていると・・・なんとなくこの歌を口ずさんでいました。本来、秋は米の収穫の時期で、実り豊かな楽しい季節のはず。
農村生活からはこうした発想はあまり出てきません。
この歌は、貴族という都会生活者の感覚から生まれたものといえるでしょう。
百人一首を覚えよう!