朝ぼらけ 有明の月と みるまでに 吉野の里に ふれる白雪 坂上是則 三十一 |
朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに あらはれわたる 瀬々の網代木 権中納言定頼 六十四 |
君がため 春の野に出でて 若菜摘む 我が衣手に 雪は降りつつ) 光孝天皇 十五 |
君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな 藤原義孝 五十 |
わたの原 漕ぎ出でて見れば ひさかたの 雲居にまがふ 沖つ白波 法性寺入道前関白太政大臣 七十六 |
わたの原 八十島かけて こぎ出でぬと 人には告げよ あまのつり舟 参議たかむら 十一 |
小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ 貞信公=藤原忠平 二十六 |
あらざらむ この世のほかの 思ひ出に 今ひとたびの あふこともがな 和泉式部 五十六 |
やへ葎 しげれる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋は来にけり 恵慶法師 四十七 |
わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の 人こそ知らね 乾く間もなし 二条院讃岐九十二 |
秋の田の 仮庵の庵の 苫をあらみ わが衣手に 露にぬれつつ 天智天皇 一 |
君がため 春の野に出でて 若菜摘む 我が衣手に 雪は降りつつ 光孝天皇 十五 |
春すぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山 持統天皇 二 |
きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣かたしき ひとりかも寝む 後京極摂政前太政大臣 十五 |
わびぬれば 今はた同じ 難波なる みをつくしても 逢はむとぞ思ふ 元良親王 二十 |
難波江の 葦のかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや 恋わたるべき 皇嘉門院別当 八十八 |
明けぬれぱ 暮るるものとは 知りながら なほうらめしき 朝ぼらけかな 藤原道信朝臣 五十二 |
ももしきや 古き軒端の しのぶにも なほあまりある むかしなりけり 順徳院 百 |
みちのくの しのぶもぢずり 誰ゆゑに 乱れそめにし 我ならなくに 河原左大臣 十四 |
長からむ 心も知らず 黒髪の 乱れて今朝は 物をこそ思へ 侍賢門院堀河 八十 |
立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰り来む 中納言行平 十六 |
誰をかも 知る人にせむ 高砂の まつも昔の 友ならなくに 藤原興風 三十四 |